どんな被写体を写しても自分自身の人間性が写真には出る
掲載号:2020年秋冬Vol.15[東京版]

- フリーランス / カメラマン
- 日本大学藝術学部 写真学科 卒業
- 井上 綾乃さん
- 勤務先ホームページ:
- アートを通じて 自分の想いを表現したい
- 自分の想いや考えを、表現する仕事に就けたらいいなと思っていたのですが、私は口下手なタイプで絵心もありません。そこで興味が湧いたのが「写真」でした。写真はリアリティを追求しながらも、自分の感性を織り込むことができるものです。大学では写真学科に進み、4年間で技術を身につけました。
- 大学で学んだのは生きることへの心構え
- 当時、出会った人から掛けられた言葉は、今も心に刻んでいます。入学して早々、クラス担任の先生から「原罪」についてのお話がありました。キリスト教では、アダムとイヴがエデンの園を追われた罪=original sin(原罪)を、人類がすべて受け継いでいるという考え方があります。それを引き合いに出し「写真学科が第一志望ではなかった人もいるでしょう。でも、あなたがこの場に居るということは、ほかの誰かが願った席を奪ったということです。だからこそ、4年間は必死に写真を学びなさい」とおっしゃいました。大学でできた親友も「頑張る時期が1回も無かった人は、人生がすごくつまらないものになる」と言って、何事にも全力投球でした。真摯に生きることの意義を、いつもその言葉に見出します。
- もう1度仕事をしたいと思ってもらえる自分である
- 撮影などのスキルは必要ですが、それに加えて求められるのが「もう1度、仕事をしたい」と思ってもらえるような人間力です。私も仕事を下さる方への感謝の気持ちを常に持ち続け、謙虚な気持ちで撮影に挑んでいます。 また、撮影した写真には人間性が出るものなので、教養を身につけることも忘れないでください。これは受け売りですが「教養とは『旅』『経験』『読書』『アート』をインプットし、アウトプットする。これを繰り返すことで身についていく」といいます。私も本を読む回数は意識して増やしています。ほかには「ブレない心」です。被写体をどう見せたいのか、写真から何を感じて欲しいのか、撮影しているカメラマンがブレてしまうと、何も伝わらない写真になってしまいますから。求められるものを把握し、どう撮影するのか、しっかりと落とし込んでシャッターを切ります。
- 人の心を明るく照らすものそれこそが芸術である
- 極端な例えですが、絶望に打ちひしがれた人が、それに触れたことで生きる活力を取り戻すことができたとしたら、「それ」が芸術なのだと思います。決してクリエイターだけが生み出すものではなく、アスリートの戦う姿も、心を動かす「それ」がある。すべての物事に「芸術」は宿っていると思います。